高千穂町で生きる、守る、未来をつくる 「高千穂町の強みと課題再発掘ヒアリング調査最終報告会」レポート①
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皆さんが知っている高千穂町ってどんなところですか?
高千穂神社や高千穂峡など有名な観光地はご存じかもしれません。しかし、他にもまだまだ魅力的な地域資源が豊富に存在します。
高千穂町は山々に囲まれた特有の地形に美しい棚田が広がり、先祖から脈々と受け継がれた伝統的な農林業や文化が、地域の強い絆で維持されています。こうした地域での暮らしそのものが世界農業遺産にも認定され、高千穂町の誇れる地域資源でもあります。
しかし、人口減少や高齢化などにより、私たちが誇れる自然や景観、生業、暮らしを持続するための町を動かす力(資源<人・モノ・金など>)が徐々に小さくなっています。高千穂町が持続可能なまちづくりを進めるため、豊富な地域資源を生かし、さまざまな産業が対話を重ね新しい価値を見出しながら、町が一体となって課題解決に取り組むことが求められます。
そこで、高千穂町にどんな魅力があるのか、どんな課題があるのか改めて知る必要がある!ということで、高千穂町の地域資源を再発掘するため、強みや課題について町内100名の方にヒアリング調査を実施しました。その結果報告として、「高千穂町の強みと課題再発掘ヒアリング調査最終報告会」を開催しました。
報告会で行った調査報告、町内事例発表、グループ討論の内容を4回シリーズでご紹介します。
高千穂町の強みと課題再発掘ヒアリング調査最終報告会レポート①
2023年5月12日、高千穂町の主催で「高千穂町の強みと課題再発掘!ヒアリング調査最終報告会」を開催しました。この報告会は、高千穂町が持続可能なまちづくりを進めるための取り組みの一環として行ったものです。各業界や関係団体、高千穂高校生ら55名の参加がありました。
- <開催概要>
- 日 時:2023年5月12日(金) 13:30~15:45
- 会 場:自然休養村管理センター
- 参加数:55名
■第1部 ヒアリング調査結果報告
- ○報告 DHE(株) 佐藤 愛氏
ヒアリングの中で共通する話題やキーワードを出現頻度別、要素別に分析した結果が報告されました。地域資源の磨き上げと観光との組み合わせによる可能性や、そのための地域内連携が課題解決へ結びつく新たな糸口になっていくことが説明されました。
(1)調査概要
- ■調査対象
- 町内の団体、事業者、そのほか町内で活躍されている方
- ■調査方法
- ヒアリング
- ■調査期間
- 令和4年7月~令和5年3月
- ■調査実施
- 100名
- 商工・観光団体 7名、観光サービス業 10名、旅館宿泊業 4名、交通事業 1名、神社 1名、
- 農業支援団体 6名、農家(農産) 4名、農家(畜産)4名、6次化事業 4名、集落営農 3名、
- 林業・林業支援団体 3名、鳥獣団体 1名、食肉加工業(ジビエ) 1名、飲食業 6名、
- 食品卸売業 1名、食品製造販売業 4名、不動産業 1名、小売業 5名、LPガス小売業 1名、
- 精米業 3名、サービス業 3名、建設業団体 1名、建設業 4名、自然保護団体 2名、
- 山岳会 1名、教育関連 5名、行政関連団体 2名、社会福祉 2名、町会議員 1名、
- まちづくり事業 2名、地域おこし協力隊 2名、一般女性(主婦) 4名、ボランティア 1名
(2)出現頻度からみた強みと課題
- ヒアリングの中でたくさんのお話を聞かせていただきましたが、共通する話題やキーワードなど、どんな強みや課題が多かったのか出現頻度別にまとめました。これを視覚的に見てみます。出現数が多い項目ほど大きく表示されています。
- 一番出現数の多かった答えは「後継者がいない」です。
- 農業、商業関わらず継ぐ人がいない、また厳しい経営環境から継がせられないという声も聞かれました。ご自身の代で辞めるという方も多く、大きな問題と感じました。
- 次に「草刈りが大変」が2番目に多い出現数となりました。「高齢化」、「人手・人材不足」と続きます。
(3)要素別に分類
この出現項目を5つの要素別に分類してみます。
- 視覚的にもう一度見てみます。
- 課題・問題に分類させてもらいました「困っていること、今後問題になると認識していることなど」が出現頻度も分類別数も多い傾向です。
- その課題・問題に対して要望、こうしたらいいと思われていることも比較的多く、共同や連携、情報交換など一緒に何かをやりたいという意見が多く感じられます。
(4)調査結果まとめ
- こうした結果を踏まえて、調査結果をまとめてみました。
■ 「町を動かす力」減少は共通の課題認識
- 「後継者」「担い手不足」「高齢化」など、調査前より「町を動かす力」減少の起因としていた課題についてはヒアリング対象者も同じ課題認識がある事が分かりました。
■自然の中の暮らしを維持する難しさ
- 「自然、自然の中の暮らし」が強みとする意見がある一方で、その維持が難しくなっています。
- 特に「草刈り」については、農家に限らず多くの方からあがった意見でした。高千穂町は特有の地形から傾斜度が高く大変な労力を必要とします。傾斜度が高いため機械の導入も難しく、高齢となった農家が農地を手放す理由の一つになっています。
■住む家、空き家の課題
- 人手不足により町外から雇用の獲得を考える事業者も多くいますが、住む家が少ないことが課題としてあげられました。空き家はあっても家主と連絡が取れない、手放さないという問題があり、手放す頃には住める状態ではなくなっている家が多く存在しています。賃貸物件も家賃相場が高く、収入に対する支出割合を多く占める状況にもなっています。新規就農など高千穂町に移住しチャレンジしたい人はいますが、すぐに受け入れられない問題があります。
■産地ブランドの確立
- 和牛、野菜、木材など町外からの品質評価が高い特産品が多い一方で、それらを使用した商品開発や高千穂独自のブランド化があまりされていない、認知されていない状況がみられました。
■町一体の課題解決を進めるための情報交換の場
- 連携や共同で事業をすることが少なく、各々が事業や課題に対して努力している状況がみられました。高齢化や人手・担い手不足で個人、一事業所だけでは解決できない課題も多くなり、連携や共同の動きに向けた情報共有・情報交換の場を求める声が多くあがりました。
■情報発信強化の必要性
- 高千穂町は有名な観光地であることから、情報発信・PRをこちらからせずとも観光客が来町する強みがあります。一方で、メジャーな観光スポット以外の場所や食事処など、事前に情報収集できる発信情報が少なく、観光客からよく尋ねられる状況もみられました。こうした状況に「黙っていても観光客が来る状況は続かない」と危機感を持つ意見も多くありました。
- 町内においても、賃貸情報や求人情報などインターネット上に開示されてない情報が多く、情報収集が難しいという声も多くありました。
■挑戦する人を応援する町になってもらいたい
- 新しい事業や新しい取り組みを行うことに対し、消極的・批判的な姿勢があると感じる方が多く、そういった状況に不満感を抱く声や、同時に挑戦を後押しする町になってもらいたいと願う声が多くありました。
■集落ごとの魅力
- 集落ごとに景色も違えば、そこにしかない神社や歴史・文化も多く存在しています。高千穂町で有名な夜神楽も集落ごとに舞の振りが異なる部分があり、昔々の生活信仰が反映されたとも言われています。そうした集落では、集落を自分たちで維持する仕組みがあり、自助と共助の力で形成された強いコミュニティがあります。
■高千穂の強み、好きなところ=守りたいもの
- 高千穂の強み、好きなところとして「自然、自然の中の暮らし」「人がいい、人とのつながり」が多くありました。一方で、「高千穂町の良さが言えない」「地元の人が高千穂の良さに気づいていない」という意見も多く、高千穂町を好きではあるが具現化できていない状況もみられました。
- 「良いところ」「好きなところ」は、「守りたいもの」「守っていきたいもの」にも繋がります。「町を動かす力」が限られてくる高千穂町にとって、何を守り残していくのかを決める大切なキーワードになり得ます。
【地域資源の磨き上げ】
- 地域資源の磨き上げを観光客ニーズとマッチングすることで、新たな価値を生み出す資源になり得る可能性は十分あり、関係人口・交流人口、雇用の創出や外貨の獲得など、地域課題を解決する手段としても期待できます。
- 観光専門のシンクタンクとして調査・研究を行っているJTB総合研究所が発表した「進化し領域を拡大する日本人の国内旅行」の結果では、これまでの観光スポットを訪れる観光から、その地域ならではの「体験」や「学び」ができる目的を持った観光ニーズが目立ってきているとあります。高千穂町の地域資源とマッチングさせていくことは十分に期待できると考えます。
調査結果を基に課題解決に向けた地域資源の磨き上げの取り組みを行いましたのでご紹介します。
- 「地域資源」×「課題」×「暮らしぶり」
- 持続可能な地域資源の磨き上げという事で、「地域資源」と「課題」と「暮らしぶり」を組み合わせた体験メニューのモニターツアーを実施しました。
- 特にこの体験メニューでは地域の課題を参加者の皆さんと共有し、大変な部分に関わっていただくことを意識したプログラムを行いました。
- このモニターツアーでは、
- 「現地に来て初めて知った」「現地に来なければ分からないことがたくさんある」など、
- 地域の方々のフィールドにお邪魔するという体験が、日常では体験する事のできないものであり、参加者の感動・経験価値度を高める結果となりました。
- また、地域の課題を共有することにより、「体験」ではなく「大変な仕事を手伝う」という課題に対しての当事者意識が生まれ、「別の作業も手伝いたい」「違う季節にも来てみたい」という高千穂町への再来・旅の目的が生まれる結果にもなりました。
おわりに 課題解決へ向けて
- 高千穂町は四季折々の自然の変化や農業の営みなど季節ごとの違いもあれば、地域ごとに景色の違いがあり、そこにしかない神社や歴史・文化も多く存在します。そのため、観光客ニーズとマッチングすることのできる地域資源はまだまだ豊富に存在すると考えます。地域課題までもが観光と組み合わせることによって町の魅力を伝えるための新たな地域資源になるとも言えます。
- 地元の人にとっての「普通」が「価値」になります。
- 「何」を磨き上げるか見つけてみませんか?
- 多様化するニーズに対応するためには、地域の方々の知恵と協力が不可欠です!さまざまな地域産業が垣根を越えて連携し、地域産業、地域住民の皆様の視点が加わることで
- 「多彩な体験を伴う価値ある観光」になっていきます。
こうした取り組みで、
- ➡内外からの新しい人の流れが生まれる
- ➡連携によって、それぞれが抱えている課題解決の新たな糸口になる
地域が抱える様々な課題解決に寄与しながら、一人でも多くの町民の皆さんに携わっていただき、持続可能なまちづくりをしていきましょう!
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